『池澤夏樹の世界文学リミックス』|個人的感想を編みこむ書評

※引用はすべて池澤夏樹『池澤夏樹の世界文学リミックス』河出文庫による

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はじめに

KKc
こんにちは! KKcです。

 池澤夏樹は『世界文学全集』を編集したことがあります。
 『池澤夏樹の世界文学リミックス』は、そのとき収録した作品と、その周辺の小説について書いたものを集めた本です。
 新聞のコラムで連載されていたということもって、ひとつひとつが短くまとまっており、とても読みやすい世界文学の紹介です。

 本記事では、『池澤夏樹の世界文学リミックス』のおすすめポイント3つを紹介します。読書の参考にしていただければ幸いです。

おすすめポイント

あらすじ満載

 私は『池澤夏樹の世界文学リミックス』で取り上げられている文学作品をほとんど読んだことがないのですが、楽しく読むことができました。
 というのも、本書は丁寧にあらすじをなぞりながら論を展開していくという構成の文章が多いからです。
 池澤夏樹は芥川賞を受賞した小説家なので、あらすじ部分だけを読んでもきっと楽しめるはずです。

秀逸なキャッチコピー

 池澤夏樹は、ただ作品名を章タイトルとするのではなく、その作品を表すキャッチコピーを付記しています。
 私が(いいな)と思ったものを引用します。

  • 女の魅力が軍艦を奪う 『バウンティ号の反乱』(31頁)
  • 博打だよ、人生は 『存在の耐えられない軽さ』(38頁)
  • 宇宙と同じ大きさの嘘 『やし酒飲み』(87頁)
  • きみは何を裏切るか? 『ヒューマン・ファクター』(116頁)
  • 聞き手のいない予言 『カッサンドラ』(164頁)
  • 旅の文学の現在形 『パタゴニア』(209頁)
  • 善半と悪半の分裂 『まっぷたつの子爵』(261頁)
  • 箱の中の箱の中の箱 『千夜一夜物語』(281頁)
  • 古代的な幸福と現代の不幸 『苦海浄土』(346頁)

 これらを眺めたとき、わくわくするのであれば、『池澤夏樹の世界文学リミックス』はとてもおすすめです。

親しみやすい文体

 「まえがき」からして「まえがき」ではなく「世界文学全集ですよ」という題名です。
 「ですよ」って。

ただ、男の読者として一言だけ言えば、ロチェスターって馬鹿としか思えない。
(159頁,最初の自立する女 『ジェイン・エア』)

たとえば、『ロミオとジュリエット』。あんなに細部までうまくできた話はない。あるいは『カラマーゾフの兄弟』。繰り返しになるけど、どうやればあれほど大きな話が書けるんだろう?
(190頁,我がロビンソン 『夏の朝の成層圏』)

作家としての自分を振り返って考えてみても、本を書くというのは変な仕事だと思う。書いている暇があったら、その間に生きればいいのに、と考え込む。書くことは自分を(この話の主人公のように)閉鎖空間に閉じ込めることだ。
(251頁,図書館からの開放 『愛のゆくえ』)

 こんな感じで、本音というか、池澤夏樹の個人的感想のようなものが文章中にポロっと出てきます。意外とそういうところが魅力的だったりするのですけど。

おわりに

 初めてこの本を見つけたときに「リミックス」の意味はわかったのですが、「世界文学」のリミックスなのか、「世界の文学」のリミックスなのか、どっちなんだ!?と混乱しました。

 前者、「世界文学」のリミックスとは、世界中で読まれている、世界を代表する、普遍的な文学について語る本ですよ、のような印象。
 後者、「世界の文学」のリミックスとは、世界に偏在している各国あるいは民族固有の物語を集めてきて、それらを個別に紹介する本……。

 つまり「世界文学を論ずる本」なのか、「世界中で集めてきた文学作品を紹介します」なのかがわかりませんでした。
 私が読んだ結論としては、前者があてはまると思います。

KKc
お読みいただきありがとうございました。

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