※引用はすべて森博嗣『ツンドラモンスーン』講談社文庫による
「ツンドラモンスーン」とは?
『ツンドラモンスーン』は森博嗣のエッセイシリーズである「クリームシリーズ」の第四弾です。
文庫書き下ろし作品で、今までに「つぶやきのクリーム」「つぼやきのテリーヌ」「つぼねのカトリーヌ」が発表されてきました。
100個のテーマについて、著者が見開き2ページでエッセイを書くというものです。
どこから読んでもよく、また、どこで読むのをやめてもよいです。
「はじめに」にタイトルを「ツンドラモンスーン」にした理由が書かれています。
<今回、最初は「中部焼き肉の国」か「チューブ焼き海苔グミ」か迷ったが、考えに考えて「ツンドラモンスーン」になった。清水の舞台から飛び降りた羽アリになった気分で決断したが、おそらく大勢の懐に飛び込んだ山荒らし的な違和感の温床となるにちがいない。違和感というより不快感が近距離か。さらば耐えん、この苦境に。>
(2頁)
<何万人もの人がこの本を読んでくれる。そうなると、幾らかの人は、なにかを得るらしい。そういう噂が地球の裏側まで届くのだ。たぶん、偏西風(ジェット気流とも呼ばれる)だろう。そんなイメージで、「ツンドラモンスーン」にした。>
(3頁)
どちらかといえば後者の引用のほうを信じてみたくもなりますが、私はどちらも信じていません。どちらもこじつけっぽいからです。
今までの「クリームシリーズ」のように「ひらがなとカタカナの組み合わせ」かつ「全部で8文字」のタイトルを適当につけたのでは、と予想します。根拠はなにもないので直感ですが。
感想
「29 フルーチェを作って感じる孤独」は、森博嗣がフルーチェを独りで作って食べきるだけのエッセイですが、とても楽しい。
いちばん好きな文章は<フルーチェをどんぶりで作るということ自体が、孤独を象徴している>(79頁)です。
独りで食事をするということは、孤独を痛切に感じるシチュエーションのうちのひとつであるのだな、と思いました。
「48 文庫書き下ろしが有利になるのはどんな条件か?」では、単行本→文庫の順で発売するときの印税と、最初から文庫のみを売る場合の印税とを、不等式を用いて比較考察しています。
「売れる本なら最初から文庫にしたほうがよい」との結論。
他の作家や出版社もこのような計算をしているのか? と考えてしまいました。
「解説」は土屋賢二氏(とても良かった)。
文中で森博嗣をけなしながらも、彼を愛してやまない土屋氏の気持ちが伝わってくるよい文章でした。
おわりに
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