芥川龍之介『蜘蛛の糸』読書感想文|100人乗っても大丈夫!

あらすじ

 

 オシャカ様はある朝、蓮の池を通して地獄を覗いた。

 

 カンダタという男を見つける。
 カンダタは以前、クモを助けたことがあった。

 

 それを思い出し、オシャカ様は近くにいたクモが出した糸をそっと地獄へ降ろした。
 カンダタは「これを登れば極楽へ行ける」と喜び糸を登る。
 ところが他の地獄の罪人も同じように登ってくる。

 

 このままでは糸がもたないと思ったカンダタは「おりろ」とわめく。
 そのとき糸はぷつりと切れ、みんな落ちてしまった。

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【読書感想文】原稿用紙5枚(2000字,100行)

 

KKc
 「蜘蛛の糸は百人乗っても大丈夫だし、蓮の花はオシャカ様の心を映す」

 

 私が芥川龍之介『蜘蛛の糸』を選んだのは、短くて読みやすそうだったからです。
 たった十頁だったので、すぐ読み終わりました。

 

 短い話だったけれども、考えることはたくさんありました。
 あらすじは以前から知っていたので『蜘蛛の糸』は「自分ひとりだけが助かろうとしてはいけない」という教訓のお話だと思っていました。

 

 それは「自分ばかり地獄からぬけ出そうとする、犍陀多の無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて、元の地獄へ落ちてしまった」という文章から読みとれます。

 

 でも今回読んでみて、私は違う感想を持ちました。
 『蜘蛛の糸』は「どんなことも前向きに考えられる。そうしたらうまくいくかもしれない」ということを表した小説かもしれないと思いました。

 

 カンダタは下を向いてたくさんの人がぶら下がっていることを知ったとき、自分のほかに大勢が加わったら、蜘蛛の糸が切れてしまうのではないか、と考えました。
 その結果「おりろ」と叫んで、また地獄に落ちることになりました。

 

 私はこの場面を読んで、「この状況では別の考え方もできるんじゃないか」と思いました。

 

 ふつう蜘蛛の糸はとても細いです。人間ひとりだって絶対支えることができません。
 だからこの物語での「糸」はきっと特別なもので、ちょっとやそっとじゃ切れない糸だと考えることが自然だと思います。

 

 カンダタが登り始めた時点で、彼はそう考えるべきだったと思います。
 カンダタは他の罪人に対して「おりろ」と言う前に、「この糸はきっと切れないんだ」とポジティブに思い込むべきだったと思うのです。

 

 「おれがぶら下がっても切れない糸だから、きっと百人乗っても大丈夫なんだ」というふうに。

 

 だから、私が今回『蜘蛛の糸』を読んで思ったことは「どんなことも前向きに考えられる。そうしたらうまくいくかもしれない」ということです。そう考えたのなら、きっとカンダタは極楽にいけただろうと想像しました。

 

 また、話は変わりますが、オシャカ様はカンダタが蜘蛛の糸を登りきれずに地獄に落ちてしまったことを「浅間しく」思ったと書いてあります。

 

 読んでいて「浅間しく」という言葉が分からなかったので辞書で引きました。「なさけなく」という意味が『蜘蛛の糸』では当てはまると思います。
 なのでこの文章は「オシャカ様は(カンダタが落ちたことは)残念なことだとがっかりした」ととらえるべきだと思います。

 

 でも私は「違うのではないか」と思いました。オシャカ様がそのとき感じたことはそうじゃないと思います。
 作者・芥川龍之介は、カンダタは「自分ばかり地獄からぬけ出そうとする」心を持っていたため落ちた、と書いています。

 

 それは分かります。
 なぜならそういう心の持ち主でなければきっと地獄になんか落ちないでしょうから。

 

 私が「違うな」と思ったのは次の箇所です。
 「御釈迦様の御目から見ると、浅間しく思召されたのでございましょう。」

 

 オシャカ様ほどの偉い人物なら、きっとカンダタの「浅間しい」心を見抜いていたに違いありません。
 だから彼がまた地獄に落ちることも正確に見抜いていたはずです。

 

 オシャカ様の気持ちは、別だったと思います。
 次の行に「しかし極楽の蓮池の蓮は、少しもそんな事には頓着致しません。」と書いてあります。
 この蓮の花が、オシャカ様の本当の気持ちを表しているんだ、と私は思いました。

 

 その直前の「オシャカ様は浅間しく思った」という文章は作者のフェイクで、こっちが本当にオシャカ様の気持ちなのだと私は思いました。

 

 以上がタイトルを「蜘蛛の糸は百人乗っても大丈夫だし、蓮の花はオシャカ様の心を映す」にした理由です。

 (91行,原稿用紙4枚と11行)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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