私が電子書籍を(あまり)読まない理由

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時間の洗礼

 今年は三島由紀夫が没してから45年である。あと5年で彼の著作権が失効し、青空文庫ですべての作品を無料で読めるようになる(はず。法律などが変わっていなければ)。
 青空文庫は実体を持たない、ネット上の読書サービスである。パソコンなりスマートフォンなりで青空文庫のHPにアクセスすれば、登録なしで過去の名作を読むことができる。

 過去の作品は良い。
 なにが良いかというと、時間の洗礼を経ている。
 時間は(とりあえず)人間がどうこうできるものではないから、それに耐えた本というのは、一定の評価を下してもいいと私は思っている。

 書店で「先月10万部売れた本」と「昨年10万部売れた本」が置かれていて、さらにどちらも読んだことがない場合、私はとりあえず後者を「良い本」として見る。
 現在(たとえば今週とか)多くの売り上げを記録するのはおそらく前者だろう(後者がメディア化などでプッシュされていない限り)。だがトータルで売れる(読まれる)数というのは後者のほうが多くなる可能性が高い。多くの読者を獲得する本というのは良い本の条件の一つであるから、私は後者に好意的な印象を抱く。

電子書籍について考える

 話が逸れてきたので戻す。
 今回は電子書籍について考えるつもりだった。
 電子書籍は近年急速にマーケットを伸ばしている(らしい)。配信タイトル数や売り上げの勢いが良いと耳にする。

 個人的にはあまり電子書籍で本を読むのは「しっくりこない」。
 だからそれについて考えてみようと思った。
 まず電子書籍の特徴として

  • 保管スペースをとらない
  • 安い
  • 品切れの心配がない
  • (大量に)持ち運びしやすい
  • 検索が容易
  • すぐ買うことができる

 などが挙げられる。

保管スペースをとらない

 電子書籍は主体がデータなので、その気になれば超薄いカードに保管することができる。
 それに対し本は一定の容積をとる。捨てずに際限なく読書をしていけば、いずれ蔵書の限界が来る。電子書籍はその点で本に勝る。

 たとえば私は夏目漱石『吾輩は猫である』を電子書籍で読んだ。書店で本を見たときとてもぶ厚かったからである。
 電子書籍で読んだことは今でも後悔していないし、今後本を購入する予定がないので、「保管スペースをとらない」は「しっくりこない」理由ではなさそうだ。

安い

 現代消費社会で消費者として最も賢いふるまいは、最小の努力で最大のサービスを受け取ることである……という考え方のもとでは、電子書籍は本に優越する。

 本より高い電子書籍を見たことがない。
 私は青空文庫の愛読者であるからこれも電子書籍での読書が「しっくりこない」理由ではない。
 ぜんぶ無料だし。
 「安いから電子書籍だ!」と心の底から思っていたら、すべての読書をデジタルで行うはず。

品切れの心配がない・すぐ買うことができる

 電子書籍の最もすばらしい特徴だと思う。
 たとえば最近だと又吉直樹『火花』がベストセラーになり、芥川賞受賞直後は書店で品切れの文字をよく見た。
 AmazonのKindle市場ではもちろんそんなことはなかった。

 と、いうことはさぞ電子書籍も売れただろう……と思ったのだが伝聞によると本200万部に対し電子書籍は10万部ほどだという。
 『火花』がいちばん売れたのは芥川賞のすぐ後、電子書籍が在庫において優位性を保っていたころだと私は予想するので、この話は少々奇妙だ。

 もし人々が「読みたいでも本は売ってない。あ、電子書籍なら品切れの心配がないぞ、よし買う!」と思っていたのなら、もう少し数字が変わっていてもおかしくはない。
 ということは「品切れの心配がない」は私が電子書籍のすばらしい特徴であると思っているだけで、大多数の日本人には共有されていない考え方であるのだ。

 たぶん日本人は品切れだったら入荷まで待つ。
 わりと「今すぐ読みたい。絶対に」と思う本は少ないのでは。
 あるいは、その時間差さえ楽しめる人が多いのだ。

(大量に)持ち運びしやすい

 村上春樹『村上さんのところ』は本と電子書籍で内容が違う。
 本は「エッセンス版」で、ふつうの単行本1冊くらいのボリュームだが、確か電子版はページ数で言うと単行本7~8冊ぶんくらいだったと記憶している。いくら村上春樹が売れっ子作家だとしてもこれは電子書籍でしか出せない。

 また外出のさい本を3冊持っていこうと思ったら小さいカバンでは出かけられないが、電子書籍だと、スマホ1つで足りる。

 紙はかさばる。

 「いっぱい持ち運びたかったら電子書籍」である。

 そもそも私は長時間外出をあまりしないし、外で読む本がなくなったら書店に足を運ぶ。
 私にはこのメリットは大して意味がない。
 これが「しっくりこない」理由なのかもしれない。

検索が容易

 読んでいてわからない言葉が出てきたときに、探しやすいということ。
 しかしこれは、本を読むときに電子辞書やスマホを携帯していれば事足りる。
 これも「しっくりこない」理由かも。

違う角度で考える

 という風にここまで考えてきたのだが、たぶん「電子書籍のメリット」だけを見ているだけでは「電子書籍がしっくりこない理由」に答えは出そうにない。
 違うアプローチを試みる。

 文庫本との比較である。

文庫本が読書のメイン

 私は文庫本で読書をすることが多い。
 その理由は

  • 収納スペースが小さい
  • 安い
  • 品切れの心配がない
  • 持ち運びやすい

 などである。

電子書籍と文庫本のメリットは重なる

 あらためて考え羅列してみると、前述した「電子書籍のメリット」と重なる部分が多いことに気がついた。
 文庫は単行本に比べサイズが小さい。ゆえに本棚に多く納めることができ、さらに気軽にカバンに入れられる。
 単行本よりも安価である。
 また文庫で発売されるということは単行本の売れ行きが一定数あったということなので発行部数もそこそこあり、品切れの心配もほとんどない(そもそも書店で品切れの文字を見るのはたいていが単行本である)。

私が電子書籍を(あまり)読まない理由

 これでわかった。
 私が電子書籍を(あまり)読まない理由は「利用しなくてもいいから」だ。
 私が文庫本における読書を選択している理由と電子書籍を選択して読書をする理由に有意差はない。

 実はそのほかにも「積読本の作用」があるのではないかと今思いついたのだが、それはまたの機会に。
 では、よい読書を。

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

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