図書館は新刊を無料で貸すな?
図書館が新刊を無料で貸し出すから、新刊がさっぱり売れない。という意見があるようです。
たぶん新刊というのは単行本のことで、単価が高い(利益率も高い?)。
売れるはずの新刊が売れないということは、作家や出版社にとってたいへんけしからん……という考え方なのでしょう。
ベストセラーの2週間あたり失う利益は?
日本図書館協会の統計(2014年)によると、全国の図書館数は3000強。
たとえば所蔵されると同時に貸し出し予約が殺到するようなベストセラーが5冊、各図書館に入ったとします。
私の記憶によると図書館の一冊の貸し出し期間は2週間。
借りた人がその後その本を買わないとすると、出版業界は単純計算で2週間ごとに約2万部(3000強×5)の利益を失っていることになります。
これって、そんなに「悪い」数字だとは私は思いません。
※日本の図書館の統計(http://www.jla.or.jp/library/statistics/tabid/94/Default.aspx)
新刊を無料で借りた読者のその後は?
「ベストセラー」の定義は数十万~百万部くらい売れる書籍、だと私は思っています。
その数字からすると、2万部というのは2~5%くらいです。
2週間でそのくらいの売り上げが落ちることは、短期的には損失かもしれません。
ですが長期的にはプラスなのでは、と私は思います。
とりあえずは一人でも多くの読者に名前と作風を知られることの方が、(そして、その読者が次は新刊を買ってくれる可能性に賭ける方が)いくばくかの印税を確保することよりもクリエイターとしてのコストパフォーマンスはよいのではないだろうか
(内田樹『街場のマンガ論』小学館文庫,205頁)
私はこの考え方に全面的に賛成です。
図書館で新刊を読んだ人は、読まなかった人よりも次の新刊を買う可能性が高い。
ついでに申し上げると、私たちは図書館で借りて読んでしまった新刊を改めて買う、という行動をとる可能性もあります。(いいな)と思った作家の本は持っていたいものです。誰にだってそのくらいのプライドはあります。
さらについでに申し上げると、新刊が文庫になったときも改めて購入するチャンスがあります。文庫にのみ付いている書下ろしや、解説目当てで購入するケースです。
図書館が無料で新刊を貸し出さなくなると?
「読者がいないが、価値ある書物」というものを考えることはできません。僕はそう考えています。本は「それを読む人」がいなければ無価値です。
(内田樹『街場のメディア論』光文社新書,144頁)
たとえば、映画やドラマのレンタルのように、新刊を借りるさいにお金を徴収するシステムを図書館が導入するとしたらどうでしょう。
たぶん図書館で本を借りる人は減ります。そしてその借りることをやめた人が新刊を買う可能性は、システムを導入する前に比べて、そんなに上がらないでしょう。
図書館に新刊目当てで足を運ぶ人が減り、そして作家の本が買われなくなる。
そういう悪循環に陥ることが予想されるので、私は図書館はこれからも新刊を無料で貸し出し続けるべきだと思います。お願いします。
図書館の経営状況に関して全くの素人であるので漫然と「がんばってください」と言うことしかできませんが、私はそんな考えです。
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