※引用はすべて森博嗣『すべてがEになる I Say Essay Everyday』幻冬舎文庫,初版による
<これは小さな革命かもしれないし、単に遅れて届いた郵便を、ポストの片隅に見つけただけかもしれない。 2001年11月 森博嗣>
(507頁)
目次
はじめに
『すべてがEになる』は森博嗣が「近況報告」として1998年に書いたウェブ日記を書籍化したものです。
1月1日から12月31日まで、すべての日付の日記が収録されています。
各月の最初のページには山下和美によるオマケマンガが描かれています。
感想
『すべてがEになる』を読んで、私がアンダーラインを引いた箇所を抜粋しながら、感想を記していきます。
同じ穴の1998年1月
<本屋に行って自分の本が置いてあると、嫌ですからね。だって、売れてない証拠でしょう? 平積みなんかしてあって、沢山あるほど余計に恥ずかしい。>
(29頁)
「古本屋にたくさん自分の本が置いてあったときは嬉しい」と、どこかで森博嗣が書いていたような気が。いや、「嬉しい」とは書いてなかったはず。確か、「一度は売れたということがわかる」のような記述だと記憶にあります(確かめろ!)。
<胸をナデシコです>
(29頁)
これは笑ったところ。
<好意的に解釈すると、「沢山食べたい奴は、安いものを食え」という意味ですから、社会の現実を教えようという指導なのでしょう>
(37頁)
学校の遠足における「お菓子を500円以内に」という規制に関して。
私のときは300円でした。
金額調整に際して苦労した覚えはないので、何も持っていかないか、ヤングドーナツ2袋を持っていったかのいずれかだったと思われます。ヤングドーナツはおいしい。
うさぎ恋し2月
<はは、便利な車って、きっと車が嫌いな人たちが乗るんでしょうね……。>
(67頁)
同じように、速読も、きっと読書が嫌いな人たちがやるのだろうか、と思いました。
お酒が好きな人も「一気飲み」なんてしないでしょう。
システム3月
アンダーラインはなし。トーマとキョロちゃんのドット絵?がかわいかった(88頁)。
4月から横倒し
<そもそも言語で記述してあるんだから、その言語を理解しない人には伝わらないんですよ。>
(131頁)
小説の誤読について。
「ぶっくらぼ」もアクセスのうち数%は海外からですが、おそらく日本語が読めない方も訪れているはずです。Bonjour.
5月にいる
アンダーラインはなし。「裸踊り」の言及に身が引き締まる思いがしました。
6月で斜め下
<サモアリナン諸島>
(205頁)
笑ったところ。
<微笑ましい話題>
(212頁)
今度文章を書くときに使いたくなった言葉。皮肉をにこにこ述べたいときに。
あ、書いた後に(にこにこ)ってつけてもいいか。
7月on the Run
<なんか情報を薄めて売っているよう>
(265頁)
テレビ番組について。
情報を調べるだけだったら、確かにテレビを見るのは効率が悪い。
回帰と収斂の8月
アンダーラインはなし。「理系は文章を受身形で作る」が興味深かった。
ピカデリー9月
<感謝するというのは、自惚れるな、くらいの意味ですよね。本気で環境・状況に感謝するというのは、神様を信じる人にしかできません。>
(365頁)
幸運ではなく、努力して良い結果を得られたときに関して。
なんか10月っぽい
<その作品の価値がどこにあるか、どこが新しいのか、それを自分がどう感じたのか、なんて、なかなか書けるものじゃありません。>
(391頁)
<だいたい、どうみたって、1冊の本を2、3時間で読んでしまった人の意見なんて、聞いてもしかたがない(と森は思う)。>
(392頁)
このあたりの文章は刺激的で、『すべてがEになる』のいちばん良いところだと思います。
ある本を読まない場合は、あらすじや内容を軽く訊いても良いとは思いますが、読むときは前もって感想などを知らなくてもいいと私も思います。聞くとしても「良かった」とか「悪かった」くらい。
だから本の感想を書くときは「読む前の人」をターゲットとするのか「読んだ後の人」を対象とするのか、最近は少し意識して書いています。
この記事は、どちらでしょうね。
<「国際化」とか口で言うだけで、夜は使えないわけですか? 地球の裏側は昼ですけどね。>
(417頁)
森博嗣の大学のサーバーが2~3日停止したことに関して。
全自動11月「せせらぎ」
<「実は、とてもテレビでは流せない下劣な事実が発覚しましたが、我々はそういったことには関りたくありません」という態度をマスコミが取れば良いのです。>
(436頁)
<犯人と決まった人でも、人権は守られるべきでは?>
(436頁)
マスコミのバッシングについて。
この日記から20年くらい経った今、マスコミはバッシングをやめません。むしろ歓迎しているように私には見えます。お金になるからでしょうね。あるいは、「大衆」が喜ぶから?
絶対に12月を口の中に入れないでください
アンダーラインはなし。東京のテレビ局と電話を介して行われた「インターネット問答」が面白かった。
テレビ局の名前を出さないところが優しいな、と思いました。
おわりに
次巻『毎日は笑わない工学博士たち』も手に入れました。
またきっと記事を書きます。
おわりに
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